母上様、
その後お変わりなくお元気ですか?
僕は思いがけず、大公にお供をしてフィレンツェに来ています。夢のようです。
メディチ家の公女がフランス王アンリ4世に嫁ぐ結婚式に参列したのです。
国王自身ははここまで来られなくて、代理人が指輪を届けに来ました。
メディチ家の御姫様がフィレンツェからパリへと離れるという事で、町を挙げてのお祝いムードでした。
結婚式は、花の聖母寺院で厳かに豪華に盛大に行われました。
今回お輿入れのマリー公女の前に、もう一人メディチ家からフランスに嫁いでいる女性がいることを知りました。
彼女は苦境を乗り越えて後にカトリーヌ大公妃となったそうです。母上はごぞんじですか?
お輿入れの時にはメディチ家から召使い、香水師、料理人など多数連れて行ったそうです。
ジェラート(アイスクリーム)やナイフやフォークも持参したそうですから、フランスはフィレンツェよりも何事も遅れていたのでしょうか。
フィレンツェは色とりどりの大理石が取れるところで、建築物の外装、内装にふんだんに使われているのでとても豪華で美しいです。
母上にもお見せしたいです。
ウフィッツ美術館は10年くらい前から少しずつ公開されていますが、
御計らいでボッティチェリ、ラファエッロ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどの描いた名画、名彫刻を見せていただきました。
美しいものが見られて幸福です。興奮の連続です。
またお便りしますね、ご報告まで
貴方のパウルより
※若きルーベンスが故郷にあてた手紙を想像して書いています。