プラド美術館で出展されていたルーベンスの絵画、3点目は『泣く哲学者ヘラクレイトス』です。
フェリペ4世が、マドリード郊外のトーレ・デ・ラ・パラーダ(狩猟休憩塔)のために注文した絵画の中の一点で、『笑う哲学者デモクリトス』と対をなす絵とのこと。
古代ギリシャ哲学からのモチーフで、17世紀当時は、「笑うデモクリトス」と「泣くヘラクトイレス」のどちらの世界観を是とするか論じられていたようです。
世の中の虚栄、人類の愚行を前に、
ヘラクレイトスのように過剰に深刻に物事をとらえるよりは、
デモクリトスのように運命を受け入れ、それを制御する賢明さを身につける重要性が説かれた(『プラド美術館展図録』p.96)とのこと。
古代の哲学者といっても、泣き顔が人間らしい自然な表情で、特に涙を浮かべている目、頬杖をついている腕や交差している足の表現にはルーベンスらしさが表されていると思いました。
ルーベンスはどちらの哲学に共感していたのでしょうか。
終わらない戦争に心は涙していたような気もします。
なお、ベラスケスがこちらの対の絵を意識して、古代ギリシャの哲学者『メニッポス』と寓話作家の『イソップ』の対の作品を描いたそうです。
ルーベンスを尊敬し、ロールモデルとしていたディエゴ・ベラスケスの絵を堪能できるプラド美術館展は、5月27日(日)までです。