師へ宛てたヴェネツィアからの手紙

Rubens_selfpotrait* オットー・ファン・フェーン先生

やっとヴェネチアに到着しました。元気でおります。色彩的に魅了されております。
偶然ですが、一人の紳士と出会いました。その方は、マントヴァ公国から来た方でした。
自分の画をお見せしたところ、マントヴァ公ゴンザガ公爵に取り次いで下さるとのことでした。アントワープから推薦状も持参していることから、この好機が実現すれば、まことに幸運と希望が湧いてきました。

フラーリ教会でティツィアーノという画家の描いた祭壇画を見ました。
ヴェネチアは湿気が強いためフレスコ画が向いていなくて、船の帆布に描かれているとのことです。ヴェネチアならではですね。

祭壇画は“聖母被昇天”がテーマです。色彩の美しさ、構図の素晴らしさに感動しました。
画家はすでに亡くなっていますが、ヴェネチア生まれの画家ですので、ヴェネチア人の誇りとしてフラーリ教会に永遠に飾られていくことでしょう。

ヴェネチアは画材が豊富です!
顔料の青のラピスラズリーはアフガニスタンから、紅色は遠い海のカイガラムシから、ギリシャに産するブナの木からはブラジリーア、というようにここには様々な色を持つ岩石なり虫なりが集まり手に入るようです。これらを砕いて、亜麻にオイルを混ぜて油絵の具の出来上がりです。
さすがヴェネチアです。

お元気でお過ごしください、またお便りいたします

ペーテル・パウル・ルーベンスより

(* オットー・ファン・フェーン・・・ルーベンスにイタリア行きを勧めた3人目の師。)

※若きルーベンスが故郷にあてた手紙を想像して書いています。

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